ごあいさつ 編集長  斉 藤 隆 幸 
仕事柄、いつも気になるのは「これを作ったのはどんな人だろう?」ということです。たとえばお気に入りの家具なら、誰がデザインしたのか。行きつけのショップなら、誰が設計したのか。ドラマや映画なら誰が脚本を書き、プロデュースしたのか。では、この店の料理はどんなシェフが作ったのだろうか…?そう思ったのがこの本をつくるきっかけでした。そこで、知り合いのシェフに「料理人にピントをあてた本ってどう思う?」と聞いたところ、「料理に関する取材は受けるけど、自分の料理観を聞かれたことは一度もない」という答えが返ってきました。小さな思いつきは一人前の企画に昇格しました。
この本に登場する13名のシェフは、僕が「この人の話を聞きたい」と思った人たちです。お店の規模とかじゃなく、シェフ自身のキャラクターを観察しながら、知らないシェフには信頼できる筋からの客観的情報をつなぎ合わせて紹介をもらい、取材のオファーをかけました。シェフのみなさん、平均3時間の取材撮影にお付き合いいただきありがとうございました。あまり前例のない本作りにここまで協力してくれたことに感謝でいっぱいです。そして、僕の主語のない説明と勢いだけの企画フレームで、ここまで立体的に仕上げたスタッフにも感謝します。
シェフズノートはランキング雑誌でもなければ、グルメ本ともちょっと違います。この本を手にとった人たちが、次にレストランで食べるとき、シェフの心の中をちょっとだけ覗いたことで、今よりもっと美味しく感じることができる。そうなればいいなと願っています。取材を終えてつくづく感じるのは、おいしい料理には力があるということ。それを作る料理人にはもっとすごい力があるということ。おいしいものを作るやつは、無敵だ。